LOVEDから始める、開発者のためのプロダクトマーケティング入門

"「プロダクトマーケティング」という単語があるのか。"これは、私が「マルティナ・ラウチェンコ / LOVED」を読み始めた感想でした。そして「LOVED」を読み終えた時、これは素晴らしい本だから、もっと多くの人に知ってもらいたいと思い、ブログを書いています。

▼ マルティナ・ラウチェンコ / LOVED
https://pub.jmam.co.jp/book/b628559.html

LOVEDの著者マルティナ・ラウチェンコは、LoudCloudやMicrosoft, Netscapeでプロダクトとマーケティングのリーダーとして活躍し、何百もの企業とのコラボレーションを成功させたプロダクトマーケティングの第一人者です。 プロダクトマーケティングの四つの基本やプロダクトマネージャーなど他職種との連帯、GTM戦略やメッセージングの方法論がシリコンバレーの事例とともに紹介されています。

ちなみにLoudCloudは「ベン・ホロウィッツ / HARD THINGS」に登場するベン・ホロウィッツが創業した会社のひとつですね。HARD THINGSとは別の切り口でLoudCloudが語られているのはスピンオフ映画を見ているようで面白かったです。

プロダクトマーケティングの目的と基本

まず、プロダクトマーケティングの目的について、LOVEDでの定義を引用します。

プロダクトマーケティングの目的は、ビジネス目標を達成するための戦略的なマーケティング活動を通じて、市場のパーセプションを形成し、プロダクトの定着を促進することだ

マーケティングという言葉に距離がある方も、ビジネス目標を達成するための戦略的な活動と捉えると親近感がわくかもしれません。

また、プロダクトマーケティング活動の基本として以下の4つが挙げられています。

  • 基本1:アンバサダー: 顧客と市場のインサイトをつなぐ
  • 基本2:ストラテジスト: プロダクトのGo-to-Marketを方向付ける
  • 基本3:ストーリーテラー: 世界がプロダクトをどう捉えるかを形づくる
  • 基本4:エバンジェリスト: 他者がストーリーを語れるように

これらの詳細については、ぜひLOVEDをお読みいただきたいと思いますので、ここでは割愛し、代わりにLOVEDで取り上げられている、プロダクトマーケティングの象徴的な事例を紹介します。

「ただプロダクトを作る」ことから、「プロダクトマーケティング」思考に焦点を移す

プロダクトマーケティングの前に、プロダクト開発だろう。と私は考えていたのですが、LOVEDでは、満足するプロダクトができてからプロダクトマーケティングを実行するのではなく、「プロダクトマーケティング」思考に焦点を移してプロダクトを作ることで、市場牽引力を生み出すことが重要だと説明されています。

良いプロダクトを作るべきなのはもっともだが、同じように市場牽引力を生み出すべき。(中略)具体的には、どこが最適な市場になるのか、その市場にリーチする最善の方法は何か、そして、プロダクトが信頼されるためには、誰が何を言うべきで、何をすべきなのか。

これを説明するために取り上げられる事例が、Read It Later(のちにPocketにリブランディング)です。Read It Laterは、リリースから数年の間に350万人のユーザーを獲得し、何百もの絶賛のレビューを集めましたが、生産性向上アプリを紹介するメディアは、同じ頃に公開されたInstapaperという競合製品しか取り上げていませんでした。Instapaperは、マイクロブログサイトのTumblrのリードエンジニア兼最高技術責任者で、月に50万回以上閲覧されるブログや、人気のポッドキャストを持つマルコ・アーメントが作ったWebページを後から読むためのアプリです。

また、Appleが「リーディングリスト」というRead IT LaterやInstapeperの機能をOSレベルで用意しました。これは「Read It Later」のアイデアが認められとも言える一方で、「Read It Later」は終わりだという発言がSNSには溢れました。

しかしながら、「Read It Later」は「Pocket」へのリブランドをはじめ、市場牽引力を高めるための取り組みをいくつも行いました。以下は、LOVEDに記載されている事例です。

  • 消費者行動のトレンドの変化に関するデータの発信
  • プロダクトの目的を、さらに大きなトレンドに結びつける
  • 3.99ドルから無料へ
  • インフルエンサーに「なぜ」を共有し、先行アクセスを提供する

これらの結果、Read It Laterは主要なアプリ賞をすべて受賞し、何百ものアプリと連携し、ベンチャーキャピタルから複数回の資金調達をし、あらゆる客観的な成功指標を達成し、Firefoxを開発するMozilla社に買収されるまでに、2000万人のユーザーを獲得しました。

私は、競合他社が自分たちよりも大きく有名な時、プロダクトを作りこみ、プロダクトの良さで勝負をして勝ちたいという衝動に駆られます。しかし、この事例を通して、プロダクトマーケティングという戦い方があることを知りました。 そしてそれは、プロダクトの質の優先順位を下げるということではなく、プロダクトの徹底した作り込みと並行してプロダクトマーケティングが実行できるチームを作ることだと理解しました。

チーム作りについてLOVEDでは以下のように述べています。

まだ完璧なチーム編成がなくとも、プロダクトマーケティングの実現は可能だ。プロダクトマーケターを置くべきではないと言いたいわけではない。強力なプロダクトマーケターがいれば必ず成果は良くなる。ただ、今いるメンバーではそれができない、という言い訳を排除したいのだ。

いい文章でしょう!この文章はプロダクトマーケティングに限らず、プロダクト開発で直面する様々な課題に対峙した時に思い出したいですね。私は「今いるメンバーではできない」という言い訳はせず、できる方法を考えた結果、チームメンバーにLOVEDを読んで!とおすすめしたり、このブログを書いています。

著者のまえがきを読んでみよう

なんと、LOVEDの冒頭にある「まえがき」が全文公開されています。ここまでお読みいただいて、LOVEDを読んでみたいと思った方は、ぜひまえがきを読んでみてください。きっとLOVEDを読み始めることになると思います。

▼ 『LOVED』マーティ・ケーガン氏のまえがき全文公開 | note https://note.com/inspired_2nd/n/n32543b5c3109


このブログがプロダクト開発に対峙している開発者がプロダクトマーケティングに触れるきっかけになれば幸いです。