目標管理は旅のしおりのように

売上や、プロダクトの機能開発、自身の成長など、目標を掲げて達成に向けて行動することは、仕事をする上で大切な能力の一つです。しかしながら、目標を考えたり、考えた目標が重荷になって心身に悪い影響を与えることは少なくないと思います。

私も、昔、自分の目標を書いて上司に見せるのは、すごく苦手で辛い気持ちになる時間の一つでした。また、掲げた目標をどうしたら達成できるのかを考えられず、手当たり次第にやってみるけどあまり成果が出ないということもよくありました。

目標を立てたけど、毎朝目標のことを思うと辛いのであれば、まずは身近な信頼できる同僚や上司、友人に相談するのがいいと思います。もし、それが難しい時は、これから紹介する「目標を旅のように捉え、道のりや道標を旅のしおりのように綴って行動する」ことで少し気を紛らわしながら一歩踏み出せれば幸いです。

ガイドブック・地図を手に入れる

旅に必要な情報は、Google Mapと口コミサイトで十分手に入るかもしれませんが、私はガイドブックが好きです。何冊か買って、両方に載っている食べ物や場所の紹介文や写真の違いを眺めるのが好きです。

多くのガイドブックには地図も付いていて、物理的な距離がわかります。ディズニーランドで夜まで遊んで、次の日の朝に三鷹の森に行くのはなかなか大変だなと一目でわかります。

こうした距離の感覚は目標でも大切です。なんとなく近いように感じていた2つのことが、実際には距離があることに後から気づくと、とても苦労します。または距離に気づかずなんかうまくいかないと悩むことになります。

そこで、目標についてもガイドブック的な本(入門書や古典、名著と呼ばれているもの)を何冊か読んでみるのがおすすめです。同じテーマを扱った本を3冊程度読むと、共通している部分や、関連する部分、反対の部分などいろいろなつながりを感じると思います。これが目標に近づくための地図になります。

私の最近の目標はチーム開発に関わるものが多いので、チーム開発の本は色々と読んでいるつもりです。まずはいろいろな本で共通している部分から真似していき、うまくいったら次に関連する部分を試してみたり、反対の部分についてもう少し情報を集めたりしながら進めています。

道標を見つける

目指す方向が見えてきたら、次はそこに向かう道中にある道標を見つけます。道標は迷子になりそうな時に進む方向を教えてくれます。一つの駅に見えるけど地下から乗ると地下鉄、2階から乗ると私鉄で、駅は合ってるはずなのに乗る電車間違えたみたいな経験ありませんか?私はあります。「地下から乗る」それが当時欲しかった道標でした。

目標に対する道標は、自分と全く違う環境で暮らしている人にわかりやすく説明できるかが一つの指針になると思っています。例えば「解像度」とか「トレードオフ」「直近」のような言葉を使っている場合、それらは業界では当然のように使われている単語かもしれませんが、自分の言葉で説明できないのであれば、おそらくその単語を理解できていないか、理解が不十分です。

このことは、結城浩さんが「例示は理解の試金石」としてわかりやすく説明されているので紹介します*1

《例示は理解の試金石》——これは、僕たちが大事にしているスローガンだ。 抽象的なことや複雑なことを「理解した」かどうかを試すには、 「例を作る」のがいいという意味になる。 理解しているかどうか不安になったら、例を作ろう。

・適切な例を作ることができたなら、自分は理解している。
・適切な例を作ることができなかったら、自分は理解していない。

私もよく例を作りながら自分の理解度を確認しています。適切な例を作ることができないことがほとんどですが、理解していないことがわかると次の一歩が踏み出せます。例えば、例を作れなかった単語をamazonで検索して見つかった本を3冊買ってみるとか、友人にその単語からイメージする事柄を聞いてみるとかですね。

予定外の出来事に対応する

やっぱりディズニーランドに行きたいよね、ということで乗り換えや宿などをしっかり準備したのですが、なんと前日にチケットが売り切れていて行けなくなりました。昔来た時は前日に買えたのですが時代は変わっているようです。困りました。

でも、私にはガイドブックがあったので落ち着いて読み直して、行けそうな観光地や遊園地を見つけて予定を組み直し、なんとか旅行を楽しく終えることができました。最初からディズニーランドに行くぞ!とだけ決めていたら悲しい結末だったかもしれません。

目標も同じようにチームの状況や会社の状況によって、変更を余儀なくされることはよくあります。それでも、これまで作ってきた地図や道標はきっと無駄にはなりません。地図があれば目的地に向かう道は一つではないことがわかるでしょう。新しい道標を見つけて進むことができます。

いくつかの小話

旅のしおりのように目標を管理する方法についてざっくりと説明しました。ここからいくつか補足情報を紹介していきます。

きっかけはゲーム

この考え方ができるようになったのは、荒れ果てた大地に点在している人から人へ荷物を歩いて届ける『DEATH STRANDING』というゲームでした。このゲームでは荷物を届ける時に、まず地図を見て、目的地までの工程表を作ります。山道は避けようとか、雨が降りそうなところは避けようとか、ここは前に通ったから安心だなとか色々考えて作ります。いざ、出発するとどうしても予定外のことが起きるので、立ち止まって地図を見て次の道を考えます。こんなことをゲームで繰り返しているうちに、同じように自分の目標も管理できるんじゃないかと思いました。

今はPlayStation 4, PlayStation 5, PC(Windows)でプレイできますが、年末にはMacでもできるようになるので、ここまで読んでいただいた方はきっと楽しめると思います。

DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT

DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT

  • 505 Games (US), Inc.
  • ゲーム
apps.apple.com

目標を立てるのが難しい

そうですね。良い目標の定義やその解説はいろいろな書籍や文章、プレゼンテーションがされていますが、結局どういう言葉、文章にしたらいいのか悩みますよね。

私のおすすめは、紙にペンで考えていることや思っている、大切にしたいことを書きだすことです。まずは、考えていることを100個書いてみてください。 多分、100個書けないと思います。その場合は、自分の考えや思いを整理したり繋いだり深掘りする方法を知ると良いかもしれません。以下の本はヒントになると思います。

仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本 | 米光 一成 |本 | 通販 | Amazon

www.oreilly.co.jp

私の旅のしおり

最後に私の目標とそこに向けたしおりを紹介しようと思います。目標は「チームメンバーの成長機会を作りながらスケジュールを守って開発を進める」ことと「リモートでいながら会社やチームの温度を感じる見立ての開発」です。詳細は省きますがそんなことを考えています。 この目標に向けた旅のしおりには道標がいくつかあるのですが、わかりやすいものを2つ紹介します。

バックアッププランを用意した上で、実装者に開発タスクを丸投げする

少し前までは、私が段取りや道を整えてから実装をお願いしていたのですが、これはチームメンバーの成長機会を私が奪っていると思いやめました。ユースケースと画面のデザインをまとめたissueを作って、あとは任せた!という感じでお願いしています。

色々困ることや悩むこと、失敗することがあると思うのですがその経験が大切だと思うので、丸投げして、困った時や相談したいことはいつでも聞いてね。という体制にしています。

また、この取り組みでスケジュールが遅延するとビジネスとして問題が出たり、周りからの心象が良くないので、もしこの日までにうまくいかなければ私が設計や実装に適宜入る。というチェックポイントを設けています。

今のところチェックポイントを前倒して実装が進んでいるのでみんなすごいです。

にぎやかなカスタム絵文字をたくさん登録する

OSSや海外のプロダクトのコミュニティツールとしてDiscordが使われることは珍しくないのですが、新機能や新製品の発表された時の絵文字がすごくて、通りすがりに見ても盛り上がっていることがわかり体が熱くなります。

もちろん、実際には熱くなっていないのですがそう見立てることができる。これに可能性を感じました。ROUTE06には既にたくさんのカスタム絵文字があるのですが、にぎやかさを演出する絵文字は十分とは言えないので追加しています。

これだけで目標を達成できるとは思っていなくて、他にも色々な取り組みをしようと思っているのですが、こういう楽しい感じのする道標をいくつか持っておくと息抜きがわりになります。

次の日はしっかり休む

ここまで読んでいただきありがとうございました。目標について苦手意識や、辛い気持ちがある方が、見方を変えて考えてみることで少しでも前向きに進められれば幸いです。

そして、旅から帰ってきたら、まずはしっかり休んで、また新しい目的地を探しましょう。