こんにちは。ROUTE06 Tech Blogの編集チームです。
ROUTE06のエンジニア対談を、連載でお届けします。
第3回は、CTOの重岡 正さんとエンジニアリングマネージャー海老沢 聡さんです。
海老沢さんは、サーバサイドからiOSまで手がける、開発歴15年のベテランエンジニア。
2021年にROUTE06へ入社し、6ヶ月間の育休を経て復職。現在は、エンジニアリングマネージャーとCHOOSEBASE SHIBUYAの開発を兼務しています。
また、長年開発コミュニティや勉強会の企画・運営に関わり、人と人をつなぐコミュニケーションが得意なエンジニアです。
そんな海老沢さんに、コミュニティ運営を始めたきっかけや、エンジニアリングマネージャーとして大切にしていることについて、話を聞きました。
プロフィール
海老沢 聡 EBISAWA Satoshi
1981年生まれ。茨城県出身。
大学卒業後、行政の仕事をしながら独学でプログラミングを学ぶ。その後、パソコンスクールのインストラクター、東芝のグループ会社でのPG、SEを経験。2011年からの10年間は、株式会社イグニスとそのグループ会社に在籍し、toC向けのWebサービス、iOSアプリの開発に関わる。
2021年3月、ROUTE06に入社。現在は、エンジニアリングマネージャーとCHOOSEBASE SHIBUYAの開発を担当する。
2011年より、デザイナーとプログラマの開発コミュニティ「P4D」を運営(現在は活動休止中)。
https://satococoa.dev/ (ブログ)
- コミュニティ運営で大事にしていること
- "よしなに"お互いの力を発揮できるチーム
- 自分の可能性への挑戦と子育てを両立するための転職
- プロダクトのグロース期でエンジニアに求められるもの
- 「やってみたい」という人の背中をぐっと押したい
コミュニティ運営で大事にしていること
重岡
私にとって海老沢さんは、P4D(※)の人というイメージがあるんです。P4Dの他に、RubyMotionのコミュニティも運営されていましたし、いろいろな勉強会で海老沢さんを見かけていました。
海老沢さんが、コミュニティを運営するようになったきっかけって、どんなことだったんですか。
※P4D:海老沢さんが主宰する、デザイナーとプログラマが集まり、Web や アプリをつくったりデザインやプログラミングについて相談したりする会
http://prog4designer.github.io/
海老沢
P4Dは、知り合いのデザイナーから「プログラミングを教えてほしい」と頼まれたことが始まりでした。プログラミングを学びたいという人は意外と多くて、「コミュニティとして取り組むと、もっとたくさんの人に教えられるな」と思い、コミュニティの形にしていったんです。
重岡
そうだったんですね。私は、エンジニアが数名しかいないような小規模のチームで働くことが多くて、気軽に誰かに相談できるような環境にいなかったんです。なので、勉強会に参加しては、たくさんの人に技術の相談をしてきました。
逆に、自分が勉強会やコミュニティを運営する側になったことはないんです。海老沢さんがコミュニティを運営するモチベーションって、どこからきているんでしょうか。
海老沢
プログラミングの楽しさを広めたい、という気持ちからですね。もともと私は、大学を卒業したあと、プログラミングとは関係のない仕事をしていました。
その事務作業が大変で、効率化のために独学でプログラミングを学び始めたのですが、試行錯誤しながらも、すごく楽しかったんです。なので、コミュニティで自分が楽しいと思うことを広められたらいいな、と思っていました。
また、エンジニアとして働くようになると、実務では消化しきれない「こういうことをやりたい」という欲求が生まれてくるものです。その欲求を、コミュニティ活動を通して発散したり、会社の外に出て人と会うことで、いろんな世界を見たいという気持ちもありました。
重岡
プログラミングの面白さや学ぶ楽しさを、共有したいという気持ちがあったんですね。
海老沢
それに私自身も、初心者の頃はRubyのコミュニティに育てていただきました。その恩返しとして、コミュニティに貢献したいと思っていました。P4Dでも、Rubyを好きな人を増やせたらいいな、と。
重岡
なるほど。海老沢さんがいる勉強会は、安心感があるんですよね。海老沢さんが、勉強会やコミュニティの主催者として大事にしていることを聞きたいです。
海老沢
参加する方をもてなす気持ちです。とくに初めて参加する方には必ず声をかけ、「何を求めて参加してくれたのかな」「楽しんで帰ってくれたらいいな」などを考えて接していました。コミュニティで出会った人とは今もつながっていますし、豊かな経験になっているなと思います。
重岡
継続してコミュニティを運営できるのが、すごいなと思います。組織作りって、大きな人数を巻き込み、動かすケースだけではないですよね。海老沢さんは顔が見える範囲のコミュニティを作ることが、とても得意な方だなと感じています。
"よしなに"お互いの力を発揮できるチーム
重岡
現在、海老沢さんは、エンジニアリングマネージャー(EM)として、エンジニアのマネジメントと、CHOOSEBASE SHIBUYAの開発全般を担当しています。マネジメントでは、どんなことを意識して、みんなと関わっていますか。
海老沢
効率的にマネジメントするよりは、みんなの顔を見ることを大切にしています。1on1でそれぞれの考えや困りごとがないか聞いたり、目標設定をお手伝いしたり。また、「この人とあの人は考えていることが近そうだから、つなげてみようかな」みたいな動きもしています。
チームに必要な方向性を見つけて、みんなの意識をそちらのほうへ促したり、といった関わり方をしていますね。必要なボールをパスしたり、落ちているボールを拾う感じです。
重岡
コミュニティでの関わり方に近い印象を受けます。
海老沢
どちらかというと、大きな組織を設計するより、小さいチームを良い感じにするほうが向いている気がします。自律した人たちが集まり、お互いの得意なことを発揮しながら、よしなに進んでいくチームが良さそうだなと。
昔は、「マネジメントはいらない」と思っていた時期もあったんです。でも、さまざまなプロジェクトや開発を経験して、うまくいかないことや、コミュニケーションの問題にぶち当たり、人間関係は大事だなと実感するようになって。
みんながよしなに動くためには、間をつなぐ存在が必要。自分は、その役割を担うのがあっていると思います。
重岡
EMのスタイルも、人それぞれですよね。エンジニアのキャリアでは、「マネージャーとスペシャリスト、どちらを目指すか?」という話がよくあります。でも、世の中にはマネジメントに全振りしたいという人もいれば、プレイングマネージャーとして、自分自身もコードを書いていたいという人もいる。ROUTE06のEMは、柔軟でありたいと思っています。
海老沢
前職でもマネジメント経験はありますが、「長く在籍していて、会社のことをよく知っているから」という背景もあったので、EMとしてチームを作ることを前提としたアサインは、ROUTE06が初めてです。
エンジニアとしてプロダクトに近いところにいたいですが、良いプロダクトを開発するうえでは、自分がコードを書くかどうかの強いこだわりはありません。メンバーのモチベーションを引き出し、楽しく開発できる環境を整え、チームを強くする関わり方もあるわけですから。
今は、チームを強くするほうにフォーカスすることが、会社としても良いし、自分の伸びしろになると考えています。
重岡
現在ROUTE06には、社会人になったばかりというエンジニアも一緒に働いています。どんなステップで、エンジニアとしてのキャリアを歩んでいくのか。その第一歩を考えるところから、海老沢さんにフォローいただいていて、とても助かっています。
エンジニアの育成も、研修のような型をつくればスケールするかもしれませんが、ROUTE06の場合は、違う方法があるんじゃないかなと思っていて。引き続き、エンジニアのキャリアについては最適な形を考えていきたいですね。
自分の可能性への挑戦と子育てを両立するための転職
重岡
海老沢さんは、ソフトウェアエンジニアとしてのキャリアも長いですよね。
海老沢
そうですね。15年ほどのキャリアがあります。でも、さきほどお話したように、もともとはまったく違う仕事だったんですよ。
水戸市の嘱託職員として、学校や公民館に望遠鏡を持っていき、星の話をする仕事をしていました。水戸市移動天文車(ミレニアムスター)といいます。
重岡
面白いお仕事ですね。
海老沢
平行してプログラミングの勉強をしていたのですが、「独学でもできた」という成功体験は、自分の礎になっていますね。
当時は、今みたいにプログラミングを学ぶ高速道路は整っておらず、夜な夜な本を読み漁って、情報サイトを調べては勉強していました。このときの試行錯誤や積み重ねが、仕事の幅につながっています。
その後、パソコンスクールのインストラクターになり、3年ほど東芝グループでPGやSEとして働き、イグニスに転職しました。イグニスでは、グループ会社の在籍も含めて、10年近くお世話になりました。
重岡
イグニスさんは、スマートフォンのアプリゲームやWebサービスを開発・運営する企業ですよね。さまざまなサービスに関わるなかで、印象に残っていることを教えてください。
海老沢
長い時間をかけて開発したサービスを、リリースから2週間でクローズしたことは衝撃的でした。でも、すぐにピボットできたという点で見れば、ベンチャーって面白いなと感じたできごとでした。
また、サービス停止をきっかけに、技術的な方向転換があり、WebからiOSの開発をするようになりました。技術の幅が広がるきっかけにもなり、今思うとラッキーだったなと思います。
そこから、RubyMotion での iOS アプリの開発を行い、 Objective-CからSwift への変遷もありましたし、ゼロからイチのサービス立ち上げも経験しました。
会社の規模も、入社時の10名ほどの組織から、100名を超える規模に大きくなり、会社の成長とともに、自分のやることが広がっていき、たくさんの成長の機会をいただいたと思います。心地よく働ける環境でした。
一方で、「ずっと同じ場所にいて大丈夫だろうか」という不安と、外の世界で揉まれたいという好奇心がありましたし、「もう一度組織が急成長していく体験をしてみたい」と考えるようになったんです。子どもが生まれることもあり、フルリモートで働けるROUTE06へ転職しました。
海老沢さんがROUTE06へ入社した詳しい経緯を語るインタビューはこちら
あくまで「キャリアSNS」だからカジュアルに相手の人となりが知れる【きっかけはYOUTRUST】ROUTE06取締役・小西智也さん& エンジニア・海老沢聡さん
プロダクトのグロース期でエンジニアに求められるもの
重岡
海老沢さんは、入社後に半年ほど育休を取り、復職して1年が経ちます。育児と仕事の両立はいかがですか。
海老沢さんが育休取得の経緯や、育休での体験を振り返るインタビューはこちら
【育休座談会】「MTGより娘とのお風呂を優先」「みんなもっと休もう」育休が変えたエンジニアたちの価値観 - エンジニアtype | 転職type
海老沢
育児をしながら働きやすいです。たとえば、保育園のお迎えで一時的に抜けることは、特別なことではありません。仕事でやるべきことはしっかりとやり、そして家事と育児にもコミットできているんじゃないかな、と。
重岡
それは良かったです。ROUTE06では、特別な事情がある人だけがリモートワークではなく、みんながリモートワークです。どんな人でも、仕事もプライベートも妥協しない環境で働けるよう、制度を整え続けたいと考えています。
では、仕事面についても教えてください。新しいチャレンジはできていますか。
海老沢
現在、CHOOSEBASE SHIBUYAを担当していますが、立ち上げ期を経て、グロース期を引き継いでいる点がおもしろいですね。プロダクトを育てていくことは新しい挑戦ですし、成長を実感します。それに、EMとしてチームを作りながら開発することも、初めての経験で、よい経験をしています。
重岡
立ち上げ期とグロース期では、エンジニアとしての関わり方も変わりますよね。
海老沢
エンジニアに求められるカバー領域が違うと思います。ゼロイチのフェーズは、検証も多いので、PoCをはじめとして、幅広い分野を知っていて、そつなくフレキシブルに動けるエンジニアが活躍しやすいですよね。
一方で、サービスが大きくなってくると、特定分野の専門性が高いエンジニアが求められる比率が高くなるかもしれません。
今はグロース期なので、どのような優先順位で開発するかを決めたり、中長期的な判断が求められたりする瞬間があります。ゼロイチとはまったく違う頭の使い方をするので、おもしろいです。
「やってみたい」という人の背中をぐっと押したい
重岡
おわりに、海老沢さんは今後どんなことをしていきたいか、教えてください。
海老沢
まずは、技術広報です。ROUTE06の開発を発信していくために、テックブログの執筆体制やレビューのフローなどを整えたいです。
重岡
海老沢さんは、発信が得意な方なので。このテックブログをはじめ、技術広報や社外向けのエンジニアコミュニティの運営などでも、ぜひ経験を生かしていただきたいなと思っています。
また、エンジニアも増えてきたので、全社横断的な交流が設けられる機会も作っていきたいです。
海老沢
実は、勉強会などをやってみたいと思っている人が、密かにいると思うんです。最近、社内で輪読会を始めたのですが、「やってみたいです」と手を挙げた人がいたんですよね。
ROUTE06で働いていると、楽しいし、自分もスキルアップできるという環境が理想だと思うんです。私は、みんなのモチベーションをうまく見つけて、やりたいと思ってる人の背中をぐっと押す。そんな感じにフォローしながら、社内を盛り上げて、会社としての強みを出していく関わり方をしていきたいです。
重岡
では将来は、どんなことをしたいですか。
海老沢
10年後は、どうなっているかわからない業界です。具体的なイメージはしづらいですが、子育てが落ち着いているとすれば、積極的にコミュニティ活動ができているといいなと思います。
仕事では、そのときどきで、自分に求められる最善を尽くし、経験を積み重ねていきたいですね。
プロダクト開発が好きなので、その中に身を置いている状態でいたいです。コードを書いていないとしても、コードを通して価値を届ける仕事の一環に関わりたい。今ある、Webブラウザやスマホがガラッと変わり、まったく違うツールや端末が生まれているかもしれないけれど、最新の技術にはちゃんと追いついていたいです。
重岡
引き続き、よろしくお願いします!
(編集・執筆:マチコマキ)