こんにちは。ROUTE06 Tech Blogの編集チームです。
ROUTE06のエンジニアによる対談を、連載でお届けします。
第1回は、CTOの重岡 正さんとエンジニアリングマネージャーの加藤 貴晴(かとう たかはる)さんです。
Androidエンジニアとしてキャリアを重ねてきた加藤さんは、ROUTE06の立ち上げ初期に入社。そのきっかけは、「Android以外の開発ができそうだったから」といいます。
加藤さんは、そごう・西武さまの展開するCHOOSEBASE SHIBUYAの開発や三菱商事さまとのプロジェクト立ち上げに関わり、現在はエンジニアリングマネージャーとして、プロジェクトの進行管理からエンジニアのマネジメントまで担当しています。
加藤さんのこれまでのキャリアをふりかえりながら、マネジメントで大事にしていることを語り合いました。
プロフィール
加藤貴晴 KATO Takaharu
1990年生まれ。愛知県出身。
大学卒業後、Webサイト制作会社に入社し、コーポレートサイトの開発や運用などに携わる。その後、Tokyo Otaku Mode Inc.とヤフー株式会社を経て、2020年ROUTE06に入社。
「CHOOSEBASE SHIBUYA」や三菱商事の部品調達に関するマーケットプレイスの開発を担当。2022年より、エンジニアリングマネージャーを務める。使用言語は、Kotlin、Node.js、TypeScript。
- 開発に対する価値観が壊れたターニングポイント
- Android開発に没頭したヤフー時代
- キャリアがあるから悩ましい?転職のジレンマとは
- エンジニアリングマネージャーのあり方を現場で学び、考える
- 1on1には必ず雑談を取り入れたい
- ROUTE06が目指す「ナラティブな組織」が見えてきた
- 10年後、何をしていたいですか?
開発に対する価値観が壊れたターニングポイント
重岡
私と加藤さんは、Tokyo Otaku Mode(※)で一緒に働いていた時期があるんですよね。
(※Tokyo Otaku Mode…アニメやマンガなど、日本のポップカルチャーにまつわる情報発信や、越境ECビジネスを展開する企業)
加藤
そう思うと、重岡さんとは8年ぐらいの付き合いがありますね。
重岡
Tokyo Otaku Modeの前は、地元でお仕事されていたんでしたっけ。
加藤
そうです。大学の頃からプログラミングをやっていて、卒業後は愛知県のWeb制作会社に就職しました。
実は、メガベンチャーのインターンを受けたり、東京で就職活動もしていたんです。でも採用されなかったから、当時は「センスないのかな」と思うこともあったり。
重岡
私も、当時成長し始めていたとあるベンチャーの最終面接に落ちて、「新卒採用ってそんなもんだよな」と思ってました。でも、行きたかった会社に中途で入社することも珍しくないですよね。入り方が違うだけ。
最初の会社では、どんなことをしていたんですか。
加藤
地元の有名企業のコーポレートサイトの開発や運用を担当しました。そのなかで、Androidアプリの開発をする機会があったんです。
それで、自社サービスの開発に興味が沸き、転職活動をしていたところ、Tokyo Otaku Modeとご縁がありました。
重岡
加藤さんがTokyo Otaku Modeに入社したとき、私も第二新卒くらいの年齢でした。なのに、社歴上の関係で、加藤さんとはメンターとメンティーのような関係になってしまって。
メンター側に立ったのは初めてだったので、うまく立ち回れなかったですね。加藤さんにむちゃぶりしてしまうこともあったなと。
私も、今よりとんがってましたし(笑)。「申し訳なかったな」とふりかえりつつ、良い経験をさせていただきました。
加藤
重岡さん、とんがってましたねー。でも、Tokyo Otaku Modeは僕の1番のターニングポイントでした。開発に対するそれまでの価値観がぶっ壊れたんです。
重岡
「価値観がぶっ壊れた」というと?
加藤
「自分はエンジニアだ」と思っていたのに、圧倒的に技術力がなかった。「プログラミングってこういうことなんだ」と気づいたのは、Tokyo Otaku Modeに入社してからです。
「Webサーバーとは?」のところから、フロントもバックエンドもしっかり勉強し直しました。Tokyo Otaku Modeの1年目はがむしゃらにやって、成長を感じられた年だったなと思います。
重岡
そうだったんですね。加藤さんは、入社してすぐにメール配信システムの内製化プロジェクトにアサインされて、大変だったと思うんですよ。
これまでの経験とは違う技術やアーキテクチャが求められるなかで、いきなり難しいことにチャレンジしなくてはいけなくて。
いっぽうで、ECのAndroidアプリの開発ではKotlinを早い段階から使っていて、対応が先進的だなって思ってました。あんまり日を浴びることのないプロダクトの開発にも、がんばって取り組んでいましたし。
やっぱりね、せっかく作ったのに、鳴かず飛ばずだったアプリもあったから。
加藤
「3日間でアプリを作って」と言われて急いだのに、リリースしなかったり、かたやリリースしたけど、運用が回らなかったりはありましたね。
ただ、アプリやサービスをゼロから開発するゼロイチの経験ができたのは、Tokyo Otaku Modeが初めてでした。1年目は本当に人生のターニングポイント。
サービスのグロースを楽しく経験しましたし、大変だったけどゼロイチの経験もできた。2年間という短い期間でしたが、本当にすごく濃い日々を過ごしました。
Android開発に没頭したヤフー時代
重岡
Tokyo Otaku Modeのあとは、ヤフーに転職しましたよね。
加藤
スタートアップで自社サービスの開発に関われたので、「もうちょっと大きな組織で開発したい」と思うようになったんです。
ちょうどヤフーがモバイルファーストを謳っていて、ECにも力を入れている時期だったんですよ。ECのドメイン知識とAndroidエンジニアの経験を買われて、Yahoo!ショッピングの開発チームに入りました。
ヤフーには3年半いましたが、Androidを追求できる環境で開発に没頭し、技術の深掘りができました。
重岡
そういえば加藤さん、ヤフーにいたときにDroidKaigiに登壇されてました!
加藤
はい。DroidKaigiの登壇は、いい経験になりました。話し方やスライドの作り方、「情報を整理して伝える」といったことが、実はできていなかったんだなと気づき、勉強になりました。
あとは、アメリカで行われたGoogle I/Oにも参加しました。発表内容が英語なのでわからないことが多かったのですが、雰囲気は味わえました。
重岡
ヤフーでは、他にどんなことが印象に残っていますか。
加藤
まわりを見る余裕が出てきて、人の動きがわかるようになってきたことです。
たとえば、長く担当しているプロダクトに新しい機能開発や修正依頼が来たとき、「あれを直せばできるな」とイメージできるようになりました。
また、「自分がどのように立ち回ると仕事が早くできて、メンバーも動きやすいだろう?」のような、全体を俯瞰してみる視点も少しずつ生まれてきたんです。
重岡
他の人の動きにも、意識が向くようになったんですね。
加藤
しだいに、技術側の意思決定や、ロードマップを書くなど、技術をリードするような立場で担当プロダクトの開発に関わることが増えていきました。
でも、もっと自分の開発技術を高めるためには、Android以外の他の領域も学ばないとな、と考え始めてもいたんです。
キャリアがあるから悩ましい?転職のジレンマとは
重岡
加藤さんがTokyo Otaku Modeを辞めたあとも、私たちは1年に1回ぐらい、飲みに行くような関係だったんですよね。
それで、ROUTE06を始める前の年の年末に「ご飯に行きましょう」と。
加藤
そのときでしたね。重岡さんから「新しく会社始めるんで、よかったらどう?」とROUTE06にお誘いを受けて。
ちょうど転職しようかなと思っていた時期だったんです。
重岡
最初は、業務委託で入ってもらって。私が言うのもなんですが、他の会社は検討しなかったんですか?
加藤
業務委託中に何社か話を聞きましたが、ほぼAndroidの開発を求められるんですよ。でも僕は、Android以外の新しいことにチャレンジできる職場を考えていたので、違うなと。
対して重岡さんは、Androidエンジニアとしての僕に声をかけてきたわけではなかった。業務委託を通して、いろいろと挑戦もできる環境だってことも感じたので、正式にROUTE06へジョインしました。
入社後は、フルスタックエンジニアとして幅広く学び直しするところから始めました。
重岡
Androidの開発者は母数が少ないので、企業としては「ぜひAndroidの開発で」となってしまうのはありますね。
ただ、ひとつの分野を極めたいという人ばかりではないし、違う開発をやってみたい人もいます。
加藤
また、ROUTE06がスタートアップであることも、入社のきっかけでした。やっぱり、シードラウンドから経験できるってあまりないことですし、チャレンジできて、良い意味で未来がわからないところに面白さやメリットを感じたんです。
重岡
たしかに、シードラウンドから参加できる機会は、人生においてもそんなにないと思います。
加藤
何より「石橋をめちゃくちゃ叩いて渡るタイプの重岡さんが共同創業者なら」という、信頼感もありました。重岡さんは、そのときの勢いやテンションで何かを判断したり、取り組む人ではないし、ちゃんと裏づけを持って行動する人。
そういう人柄も知っているので、一緒に働いています。
重岡
私の性格をわかってくれていますね!
加藤さんはヤフーを経験されていて、エンタープライズ企業をはじめ、さまざまな立場の人と一緒に働く知見も持っている。そういうところも、私は信頼しています。
実際に加藤さんは、自分のことをどんなタイプだと思っていますか。
加藤
自分が何をすべきかを考える、責任感が強いタイプだと感じています。仕事で必要ならば、何でもやるぐらいの気持ちです。
たとえば、プロジェクトの安定稼働を考えるような場面では、「自分はこのポジションにいると良さそうだな」とか「こんな技術を学ぶ必要があるな」と考えるんです。全体を俯瞰して見ながら、自分の立ち位置を変えてきたところがあります。
開発が好きで今があることは確かですが、明確に「こうありたい」のようなベースの上に、僕が成り立っているわけではないんです。
ヤフー時代の経験も大きくて、開発のために必要な関係や環境作りも含めて仕事だなと思い始めています。ちょっと大人になったんですかね。
エンジニアリングマネージャーをしているのも、プログラミングだけじゃない開発の仕事にも興味があるからなんです。
エンジニアリングマネージャーのあり方を現場で学び、考える
重岡
エンジニアリングマネージャーも、2年目に入るところです。マネージャー業は、率直にどうですか。
加藤
本当に何も経験がないところから始めているので、今も勉強をしながらですね。
僕が注力している仕事は、大きく3つあります。クライアントワークのQCD(Quality/Cost/Delivery)のサポートと、心理的安全性のある環境作り。そして、メンバーのキャリアパスを意識することです。
ROUTE06は、お客様へいろいろな価値提供ができる点が強みで、案件も開発フェーズもさまざまです。なので、メンバーそれぞれのキャリアビジョンをふまえて、日頃から「誰をどのプロジェクトにどのタイミングでアサインするのが良いだろうか」を考えています。
重岡
ROUTE06は、エンジニアが成長できる機会やキャリアパスが多様にあります。主体性が大事なので、エンジニアには、得意・不得意や、何をやりたいか、やりたくないかを聞くようにしています。
先ほどの加藤さんの「Android以外の開発をやりたい」みたいに、得意なことが必ずしもやりたいこととは限らない。ミスマッチを起こしたくないので、とくに採用面接では5年後、10年後の先のことも、必ず聞いています。
では、エンジニアリングマネージャーになって、加藤さん自身に変化はありましたか?
加藤
学び方が変わりました。開発者のときは、書籍やブログから学ぶことが多かったのですが、マネージャーになってからは、現場で学ぶことが増えました。
ROUTE06のエンジニアリングマネージャーの仕事は、実務から個人のキャリアマネジメントまでと幅広い。技術のことだけなら、QiitaやZenn、勉強会などで学び、仕事に活かせるんですが、マネジメント業務はそうはいかないし、答えがありません。
上長とメンバー間で情報をやり取りする際の機密性のとりかたや、期待値コントロール、フィードバックの方法など、さまざまなことを現場から学んでいますね。「やっぱり仕事って、人という"いきもの”と対話することなんだな」と実感しています。
マネジメント関連の書籍やブログも、自分のふるまいの答え合わせをするような感覚で読んでいます。
1on1には必ず雑談を取り入れたい
重岡
加藤さんは、メンバーとのコミュニケーションを大事にしているなぁと思ってます。
加藤
僕が見ているメンバーに対しては、週1回30分の1on1をしています。あとは、担当案件の開発メンバーとも、15分くらい話をする機会を作っていますね。僕が、会社で1番1on1をしている人間なんじゃないかなと。
実は、ROUTE06に入社したときから1on1を意識していて、自分からメンバーに声をかけていました。
重岡
そうだったんですか!
加藤
1on1の文化に初めて触れたのはヤフー時代で、仕事を進めるうえでとても良いものだなと感じていたんです。メンバーとの関係性の構築や、隠れている問題の発見などにつながっていました。
ROUTE06は会社の立ち上がりからフルリモートで、それを前提とした組織作りをしていますが、個人としては不安もあったんです。やっぱり、隣で机を並べつつ作業していないと、何を考えているかわからないことがあるので。
どうしたらいいかな?と考えていたとき、ヤフー時代の1on1のことを思い出したんですよ。それで、みんなと雑談を兼ねた1on1をするようになりました。
重岡
エンジニアリングマネージャーとなった今では、1on1でどのようなことを話しているんですか。
加藤
取りかかっている仕事のことや、今後どうしたいのかなどをメインに話しています。共通の仕事があれば、自然と思ってることは出てきますし、会話に苦労はしていません。
毎日、デイリースクラムを兼ねた朝会もやりますが、そのタイミングで言いづらかったことや、言うほどでもないことを、みんな抱えていることが多い。それを吐き出す場として、1on1を使っています。
そして、やっぱり雑談は欠かせません。相手から思いがけない情報を得られることもあるので、1on1は大切にしたいです。
ROUTE06が目指す「ナラティブな組織」が見えてきた
重岡
加藤さんから見て、ROUTE06はどんな会社でしょう。
加藤
遠藤さん(ROUTE06 CEO・遠藤崇史)が話している「ナラティブ組織とは何か」が、自分なりに腑に落ち始めた感覚があります。
ROUTE06のメンバーは、Webサービスの開発経験が豊富で、良いところや悪いところ含めて多くの知見を持っています。それぞれの技術や経験がもとになって、成り立っているところがあるんです。
重岡
ROUTE06は、ナラティブな組織を目指しているんですよね。遠藤さんの言葉を借りると、「ナラティブ」とは、特定の誰かの視点に限定されず、登場する一人一人が主体となり、それぞれの人生/経験/想いなどが、物語のように自然と紡がれていく状態のことを言います。
加藤
仕事をしていると、「本当にこの人が同じ組織にいてくれて良かった」と感じることが多いです。
たとえば、ある領域のドメインに詳しくて、仕様を理解してコードに落とし込むことが得意な人がいたり、ゼロからフロントエンドを立ち上げることが大好きな人がいたりします。エンタープライズ企業ならではの商流や、業務フローに詳しい人もいる。
本当に、みんなの経験から僕も勉強をさせてもらっています。今ある関係性が、ナラティブな組織なんだなと実感しています。
10年後、何をしていたいですか?
重岡
では10年後、加藤さんはどんなことをしていたいですか。
加藤
なんとなくですが、開発に関わっていて、現場に近い側にいると思います。重岡さんは?
重岡
10年後、世の中はもっとデジタルに進んでいるだろうし、デジタルにまつわる課題も次のフェーズになっていると思うんですよね。
ROUTE06は、世の中の課題や環境を解像度高く捉え、関われる会社になっていてほしいし、僕個人も、その課題解決に引き続き携わっていきたいと思っています。
あと、小さくてもいいからコードを書いていたいな。プロダクトのコードをバリバリ書いているイメージは浮かんでいないんですが、プログラミングはやり続けたいです。
加藤
10年後に何をやっているかを定めるために、今動いているところがあります。エンジニアリングマネージャーを通して、自分の強みはどこなのかを探りたいです。
ここ数年で、自分の強みはプロジェクトを推進する力や、人とのコミュニケーションの部分にあると見えてきたんです。その強みを生かせる環境や組織にいたいですね。
(編集・執筆:マチコマキ)